クリニックの広告運用|医療広告ガイドライン準拠の進め方
クリニックの広告運用を、医療広告ガイドラインを踏まえた進め方とあわせて解説。表現の規制に配慮しながら、オンライン診療の集客で実践した運用の考え方を紹介します。医療広告のルールを守りつつ広告を活用したいクリニック向けのガイドです。
公開: 2026年6月19日 最終更新: 2026年6月20日
この記事でわかること
クリニックの広告運用は、医療広告ガイドラインのルールを守ることが大前提です。効果の保証、患者の体験談の広告利用、比較優良広告、誇大表現、費用の過度な強調は禁止されています。そのうえで、診療内容に合ったキーワード設計と、事実に基づく広告文で運用します。この記事では、規制に配慮した進め方とオンライン診療での実践例を解説します。
クリニックの広告運用で押さえるべき医療広告のルール
クリニックの広告は、ほかの業種と決定的に違う点があります。それは、医療法と医療広告ガイドラインという独自のルールに従う必要があることです。広告運用のテクニックの前に、まずここを押さえなければ、知らないうちに違反してしまうおそれがあります。
医療広告ガイドラインとは
医療広告ガイドラインとは、厚生労働省が医療法に基づいて定める、医療機関の広告に関する指針です。人の生命・健康に関わる広告であるため、患者を不適切な広告から守ることを目的に、一般の広告より厳しいルールが設けられています。
注意したいのは、クリニックのウェブサイトやSNSも「広告」として規制の対象になる点です。具体的には、「特定の医療機関への受診などを誘うもの」と「医療機関を特定できるもの」の両方を満たす情報は、医療広告として扱われます。ホームページやランディングページ、広告文も例外ではありません。
厚生労働省は「医療機関ネットパトロール」という監視・通報の仕組みを設けており、違反が見つかれば行政指導や是正命令、悪質な場合は罰則の対象にもなります。広告は常に見られているという前提で運用する必要があります。なお、広告で表示できる事項には制限がありますが、ウェブサイト等で一定の要件を満たすと、その制限が解除される「限定解除」という考え方もあります(詳しくは後述します)。
※ 本記事は規制の概要を分かりやすく整理したものです。最終的な可否判断は、厚生労働省の一次情報や専門家への確認をおすすめします。
広告で避けるべき表現
医療広告ガイドラインで「禁止される広告」とされている代表的な類型は、次のとおりです。クリニックの広告運用では、これらに該当しないことが絶対条件になります。
・虚偽広告:事実と異なる内容。たとえば根拠のない「絶対安全」「100%治る」など。
・比較優良広告:他院より優れていると示す表現。「地域で一番」「No.1」など(客観的・公的な裏付けがない場合)。
・誇大広告:事実を不当に誇張し、誤認させる表現。「必ず改善する」「痛みが完全になくなる」など、根拠なく効果を断定するもの。
・患者等の体験談の広告利用:治療内容・効果に関する患者の主観的な体験談を、誘引を目的に広告へ利用すること。
・治療等の前後の写真(ビフォーアフター):誤認させるおそれがあるもの。掲載するなら、限定解除の要件(治療内容・費用・主なリスク・副作用の明記)を満たす必要があります。
・費用の過度な強調:「期間限定◯◯円」のように、安さや価格を過度にあおる表現。
加えて、クリニックの広告は景品表示法(不当な表示を禁止する法律)の対象にもなります。医療広告ガイドラインと景品表示法、どちらのルールも守る必要があると覚えておいてください。
ポイントは、「言葉狩り」ではなく「受け手に誤認を与えないか」という観点で文脈ごと判断することです。効果を断定したり、誘引を強めたりする方向の表現を避けるのが基本姿勢になります。
クリニックの広告運用の進め方
ルールを押さえたうえで、実際の広告運用の進め方を解説します。基本の考え方はリスティング広告の運用と共通ですが、ここではクリニックならではの注意点を織り込みながら進めます。広告運用全般の基礎は、「リスティング広告の運用方法」記事で解説しています。
ステップ1|ターゲットと診療内容の整理
最初に、「どの診療を、どんな患者に届けたいか」を整理します。クリニックは診療科目や提供する診療内容によって、来てほしい患者像が大きく変わります。ここを曖昧にしたまま広告を出すと、診療内容と合わない問い合わせばかりが増えてしまいます。
診療内容を整理する際は、「事実として何を提供しているか」を客観的に書き出すのがコツです。これがそのまま、規制に配慮した広告文(誇張のない、事実に基づく表現)の土台になります。
ステップ2|LTV基点でCPを細分化したキーワード設計
次に、キーワード設計です。ここで重要なのが、LTV(顧客生涯価値)を基点に考えることです。LTVとは、1人の患者が継続的な受診などを通じて最終的にもたらす価値の総額を指します。
クリニックの広告では、「問い合わせ件数」や「登録件数」だけを見ていると、その先の受診・継続につながらない確度の低い反応が混ざります。そこで、キャンペーンを検索意図ごとに細分化し(CP=キャンペーンの細分化)、件数の手前ではなくその先の行動まで計測対象に含めます。これにより、本当に受診につながるキーワードに予算を集中できます。
このとき作る広告文は、前章のルールに沿って「事実ベース」であることが前提です。効果を断定する表現や費用を過度にあおる表現は使わず、客観的な診療内容・診療体制を伝える方向で設計します。
ステップ3|配信開始後の数値確認
配信を始めたら、数値を見ながら継続的に調整します。確認する主な指標は、表示回数・クリック率・CPA(顧客獲得単価)、そしてその先の受診・継続の状況です。
クリニックの広告では特に、「件数は取れているのに受診につながらない」というズレが起きやすいため、件数だけでなくその先まで追うことが欠かせません。反応の良い訴求・キーワードに寄せ、合わないものは見直す。この地道なサイクルが、規制を守りながら成果を積み上げる近道です。
広告運用で配慮すべき表現の具体例
ここでは、実際の広告文・LPで「何に注意し、何なら伝えられるか」を具体的に整理します。
広告文・LPで注意する点
避けるべき表現の考え方を、具体例で示します。
・「必ず治る」「100%安全」:根拠なく効果・安全性を断定する
→ 虚偽・誇大広告のおそれ
・「地域でNo.1」「他院より優れた」:客観的・公的な裏付けのない優位性の主張
→ 比較優良広告のおそれ
・「患者さんの喜びの声(治療効果の体験談)」:治療内容・効果に関する主観的体験談の広告利用
→ 禁止対象
・「今だけ◯◯円」:費用や安さの過度な強調
→ 禁止対象
これらは、広告文だけでなくLPの見出しやアンカーテキスト(リンクの文字)でも同様に注意が必要です。リンクの文言も広告表現の一部とみなされうるためです。
ガイドラインの範囲内で伝えられること
「あれもこれもダメ」となると萎縮してしまいますが、事実に基づく客観的な情報は伝えられます。たとえば、次のような内容です。
・診療科目・対応している診療内容
・診療時間、休診日、土日祝の対応の有無
・オンライン診療に対応しているか、その流れ
・所在地・アクセス・予約方法・連絡先
また、自由診療について情報を載せる場合は、「限定解除」の要件を満たすことで、より詳しい情報も掲載できるようになります。具体的には、ウェブサイト等で、①患者が自ら求めて入手する情報であること、②問い合わせ先を明示すること、③自由診療では通常必要な費用等を示すこと、④自由診療では主なリスク・副作用等を示すこと、といった要件です。
要するに、「効果をあおる」のではなく「事実を正確に、わかりやすく伝える」方向であれば、伝えられることは十分にあります。これが、規制を守りながら集客するための基本姿勢です。
クリニックの広告費用の考え方
最後に、広告運用にかける費用(予算)の考え方を簡単に整理します。
ここでいう「費用」は、診療の料金ではなく、広告運用にかける予算のことです。診療費用の安さを売りにする訴求は、前述のとおり規制上のリスクがあるため、本記事では扱いません。
広告予算は、「いくら使うか」よりも「使った予算がどれだけの価値を生むか」で捉えるのが基本です。1件の受診・成果を獲得するのにかかった費用(CPA)と、その患者がもたらすLTV(顧客生涯価値)を見比べ、LTVの範囲内でCPAを収められているかを判断します。
安く抑えること自体が目的ではなく、「投資に見合う成果が出ているか」を基準にする。この考え方は、クリニックに限らず広告運用全般に共通します。費用対効果の指標の基本は、「広告の費用対効果とは」記事で詳しく解説しています。
オンライン診療クリニックの広告運用で実践したこと
ここでは、実際にオンライン診療を提供するクリニックの広告運用を担当した事例を、規制に配慮しながらご紹介します。以下は、過去のこの案件における取り組みと結果であり、同じ成果を保証するものではありません。
LTV基点のKW戦略への転換とLP・広告文の連動強化
この案件では、競合が多い中で、単に問い合わせ(CVポイントは公式LINE登録)を集めるだけでなく、その先の受診(購入)まで進んでいるかが重視されていました。当初のリスティング広告では、CPA(顧客獲得単価)が高止まりしているという課題がありました。
そこで、2つの取り組みを行いました。1つ目は、LTVに基づいたキーワード戦略への転換です。キャンペーンをビッグキーワード・テール系・3語以上のキーワードへ細分化し、登録の先にある購入率まで計測する設計に切り替えました。2つ目は、LPと広告文の連動強化です。「すぐ診療が受けられる」「土日祝でも診察可能」といった事実に基づくベネフィットを広告文で伝え、同じ内容をLPのファーストビューにも記載して、ユーザーの期待と遷移先のズレを解消しました。
これらの取り組みの結果、この案件では購入率が1.8倍に改善しました。また、CPAは初期目標の25%削減を達成しています。
運用開始2か月目には、約8,000万円の新規顧客売上の創出に寄与しました。
広告費は当初の2,000万円から1億円規模まで拡大しています。
この間、売上は3億円規模まで伸びています。
数字の手前の「件数」ではなく、その先の「購入率・LTV」まで見据えた設計が、成果につながった案件です。
オンライン診療ならではの広告運用の工夫
オンライン診療には、「来院せずに受診できる」「時間や場所の制約が少ない」といった、対面診療とは異なる強みがあります。広告運用では、この特性を事実として正確に伝えることが効果的でした。
たとえば、診療までのアクセスのしやすさ(オンラインで完結する、対応時間が幅広い等の事実)を広告文とLPで一致させることで、ユーザーの期待と実際の体験のギャップをなくし、登録から受診への移行をスムーズにできます。ここでも、あくまで事実を伝えるにとどめ、効果や安全性を断定する表現は使っていません。
同様のクリニック・医療系の広告運用の事例は、「広告運用の事例5選」記事でもご紹介しています。
クリニックの広告運用に関するご相談
クリニックの広告運用は、医療広告ガイドラインのルールを守ることが大前提です。そのうえで、診療内容に合ったキーワード設計と、事実に基づく広告文で、受診につながる運用を組み立てていきます。とはいえ、「どこまでが規制の範囲か」「自院の場合は何を伝えられるか」は判断が難しく、表現一つで違反リスクが生じることもあります。
弊社では、オンライン診療クリニックをはじめ、規制に配慮しながら医療系の広告運用を行ってきた経験があります。「医療広告のルールを守りつつ広告を活用したい」「今の広告表現が大丈夫か不安」といった段階からでも、現状をお聞きして進め方を整理いたします。まずはお気軽にご相談ください。